どーも。時たまあるドカ食いのため「食生活に問題アリ」だと大いに反省中、公平です。
さて本日は、第90回アカデミー賞最多13部門ノミネートかつ最多4冠を受賞、
究極のファンタジー・ロマンス映画『シェイプ・オブ・ウォーター』
についてご紹介させていただきます。
【目次】
【『シェイプ・オブ・ウォーター』作品情報】
〔ストーリー〕
1962年、アメリカ。政府の極秘研究所で清掃員として働くイライザはある日、施設に運び込まれた不思議な生きものを清掃の合間に盗み見てしまう。“彼"の奇妙だが、どこか魅惑的な姿に心を奪われた彼女は、周囲の目を盗んで会いに行くようになる。幼い頃のトラウマからイライザは声が出せないが、“彼"とのコミュニケーションに言葉は必要なかった。次第に二人は心を通わせ始めるが、イライザは間もなく“彼"が実験の犠牲になることを知ってしまう。“彼"を救うため、彼女は国を相手に立ち上がるのだが――。
〔ギレルモ・デル・トロ監督の集大成〕
この『シェイプ・オブ・ウォーター』のメガホンをとったのは、ギレルモ・デル・トロ監督という監督さんです。
過去に、圧倒的な世界観を描いた作品『パンズ・ラビリンス(2007)』を創ったメキシコ出身の鬼才です。
そんなデル・トロ監督ですが、本作を自身の一番のお気に入り映画と述べています。
「この映画が、自分の映画で一番お気に入りなんだ。だから、より多くの人に見てもらうために最低6カ月はプロモーションに費やす必要がある」。
圧倒的な愛の美しさ、そして唯一無二の世界観を描いた本作、
まさにデル・トロ監督の集大成と言えるでしょう。
【『シェイプ・オブ・ウォーター』感想】
〔映画ならではの「美」を表現したラブ・ロマンス〕
では、早速『シェイプ・オブ・ウォーター』の中身を見ていきたいと思います。
この『シェイプ・オブ・ウォーター』は、ひとことでまとめてしまえば、
「孤独な女性と謎の生物との言葉を超えた『愛』」でしょう。
でもこれでは、いささかザックリ感は否めませんので(笑)、どういうことか詳しく見ていきましょう。
主人公の女性は、過去のトラウマにより声を出すことができなくなってしまい、それ以来、手話でコミュニケーションを取っています。
そんな女性が、ひょんなことから「水の中で生きる半魚人のような生物」と出会い、なんとなく自分と近いものを感じ惹かれていきます。
この字面だけで読むと、あまり現実性がなく共感を得がたいと思いますが、
このファンタジーでしか表現できない美しさがあるところに本作品の魅力があります。
『美女と野獣』という作品だって一見するとあり得ない恋愛ですが、 物語を通じると、非常に美しく詩的な意味での力強さを感じますよね?(笑)
そして、本作のキーポイントは、
愛を声で伝えられないということです。
主人公が、どれだけ「彼」を愛しているか伝えたいのに言葉は伝わらない。
逆に、もちろん「彼」も言葉は話せないので、主人公に言葉を伝えられない。
しかしながら、お互いにノンバーバル(Non-Verbal)なコミュニケーションでも、
お互いに気持ちが伝わってくるのが分かり、言葉では伝えられない「何か」を感じます。
そんな、「形にならない目に見えない愛」を美しく描けるというのは映画だからこそ、むしろ、
『シェイプ・オブ・ウォーター』だからこそ表現できた「美」ではないんじゃないかと思います。
〔ポリティカル・コレクトネス(政治的妥当性)を徹底的に追求〕
さて急なんですが、みなさんは
「ポリティカル・コレクトネス(political correctness)」
という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
ポリティカル・コレクトネス(political correctness、略称:PC、ポリコレ)とは、性別・人種・民族・宗教などに基づく差別・偏見を防ぐ目的で、政治的・社会的に公正・中立な言葉や表現を使用することを指す。政治的妥当性ともいう。1980年代に多民族国家アメリカ合衆国で始まった、「用語における差別・偏見を取り除くために、政治的な観点から見て正しい用語を使う」という意味で使われる言い回しである。「偏った用語を追放し、中立的な表現を使用しよう」という活動だけでなく、差別是正に関する活動全体を指すこともある。
いわば、ポリティカル・コレクトネスとは「差別的な表現をなくそう」とする考え方です。
今の世の中、様々の価値観が爆発的に増えてきていて、ヒトは他のものを信用できなくなってきているように感じます。
たとえば、最近よく言われる話ですが、日本では外国人労働者の方が増えてきていて、
お店などで日本人以外の店員さんと接する光景を目にすることも多くなってきました。
でも、やっぱり住み慣れた日本で外人さんが増えることに違和感を感じる方も多いのではないでしょうか?
なにも、その違和感を感じるのはヘンなことではなく当然のことだと思います。
なぜなら、生物学的にヒトは自分と違うヒトを前にすると抵抗感を感じるものなので。
それでも、その「『違い』だとか『違和感』を乗り越えていきましょう!」というのが「ポリティカル・コレクトネス」です。
本作だと、主人公の「声の出せない女性」と「謎の生物(=アセット)」がマイノリティーです。
そして、主人公・イライザの仕事仲間のゼルダは黒人として虐げられており、
またイライザの同居人のジャイルズはゲイだという理由で市民権はありませんでした。
そんな彼らは当然ヒトですから、一見すると謎の生物と全然違うようにも見えますが、
ここでは明らかに、マイノリティーという点では同じなのです。
物語の中盤には、「実験のため殺される予定の謎の生物を助けたい!」とイライザがジャイルズに協力を要請するシーンがあり、
「私は何?私は喋ることができない。彼も言葉を喋ることができない。私たちには何の違いもない」と手話で語りかけます。
まさにこの言葉が、『シェイプ・オブ・ウォーター』の裏テーマ、というか本質を表しているのではないでしょうか?
いろいろな形でマイノリティーが増えていくことは自然の流れで、これを大衆が虐げてきた歴史がありますが、
日本だけではなく世界も、「ポリティカル・コレクトネス」を考えるべき変革の時期に今まさにあります。
そういった意味で、本作品は「ポリティカル・コレクトネス」を徹底的に追求した稀有な映画なのです。
〔「水」=「時間」?〕
最後に少し触れておきたいのが、『シェイプ・オブ・ウォーター』の「ウォーター」の部分、つまり「水」についてです。
以前に、本ブログでも「水」ということについての記事を書かせていただいたのですが、
本作品における「水」は「時間」、つまり永遠性を内包していると考えられます。
www.life-travel-consultant.com
実は、「時間」について意識しながら本作品を見てみると、たくさんの発見があります。
たとえば、主人公・イライザの生活というのは「時間」というものにいかに制約を受けているかが分かり、
起きる時間、ゆで卵を茹でる時間、会社に設置されているタイムカードなどなど、「時間」の重要さが見てとれます。
この時間の制約が、「謎の生物(=アセット)」の登場により少しずつ変化していくのです。
毎日のゆで卵の数が多めになったりするシーンなんかは、まさにそれが顕著にあらわれているシーンでしょう。
その他にも、「水=愛」だとか「水=価値観」なんていった捉え方もある見たいですが、
ここでは「水=時間」と考えたら、物語がよりいっそう深く楽しめるかと思います!
【まとめ:多様性の尊重をテーマにした芸術性の高い「愛」の物語】
いかがでしたでしょうか?
今回は、ギレルモ・デル・トロ監督が贈る切なくも愛おしい映画、
『シェイプ・オブ・ウォーター』についてご紹介いたしました。
実は、そこそこ賛否両論のレビューがあった本作みたいですが、
非常に芸術性が高く「生涯の一本」と言っても良いくらいの傑作
であると個人的には感じています。
みなさまも、アカデミー賞最多4冠を受賞した『シェイプ・オブ・ウォーター』、
ぜひぜひ、寒いこの季節に心を温めるのに観てみてはいかがでしょうか?(笑)
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ちなみに、今回ご紹介した『シェイプ・オブ・ウォーター』はAmazon Prime VideoやU-NEXTにて観ることができますので、
ぜひぜひ観てみてくださいね。(2019年2月現在、いずれも無料ではなく観るために課金が必要ですのでご注意を!)
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それでは、今回これにて失礼します。
皆様に、心よりの感謝を込めて。
公平